コウヤマキ(高野槇)

植物プロファイル

 通称

コウヤマキ(高野槇・高野槙)
ホンマキ(本槇)
マキ
Japanese Umbrella-pine
金松属

 植物系統

針葉樹
コウヤマキ科
コウヤマキ属

 産地

日本
和歌山県

 抽出部位/方法

枝葉
水蒸気蒸留法

 香りの種類

ハーバル
グリーン

 香りのノート

トップミドルノート

 ケモタイプ(成分例)

α-ピネン 27.5%
δ3-カレン 9.5%
d-リモネン 6.7%
カリオフィレン 6.5%
βミルセン 5.4% 他
モノテルペン炭化水素類 50%
セスキテルペン炭化水素類 50%

 ガスクロマトグラフィー分析データ

準備中 分析 by 化学リテラシーを高める会

 学名について

Sciadopitys verticillata (Thunb.) Siebold et Zucc.

  スキアドピテュス ウェルティキルラタ
ラテン語の発音

意味は「傘松」

一属、一種の特殊性。

Sciadopitys「傘松」 sciadoc=傘 + pitys=松
verticillata「輪生」茎の周りを取り巻くように1つの節に3枚以上の葉がついてること
(Thunb.)命名者:スウェーデン人医師、植物学者、リンネの弟子
Carl Peter Thunberg (カール・ベーテル・ツンベルク
出島滞在1775年~1776年
Siebolt変更者1:ドイツ人医師・博物学者
Philipp Franz Balthasar von Siebold
(フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト
出島滞在1823~1829年、1859~1862年。江戸幕府の外交顧問
Etand」を意味。 et が付くのは発表が共同の場合。
Zucc変更者2:ドイツ人植物学者:Joseph Gerhard (von) Zuccarini
(ヨーゼフ・ゲアハルト・ツッカリーニ

ツンベルクとシーボルトは、江戸時代、長崎の出島に来日して植物学や蘭学を日本に押ええ、西洋に東洋学の発展に寄与した出島の三学者の二人。シ-ボルトがドイツへ帰国後に日本から持ち帰った膨大な植物標本と川原慶賀に描かせた植物絵を用いてツッカリーニとの共著でFlora Japonica 『日本植物誌』を完成させた。

コウヤマキは最初ツンベルクによって「Taxus verticallata」イチイ属の種として記載されたが、シーボルトは1830年に『日本産有用植物概説』でコウヤマキをマツ属(Pinus)の種とした。その後『日本植物誌』第2巻の巻頭でコウヤマキ1種のみからなるコウヤマキ属を設立し、コウヤマキの学名を提唱。その後、東京大学でも植物学の研究が進展し、1934年には植物学者、早田文蔵(はやたぶんぞう)がコウヤマキの特殊性を踏まえ、コウヤマキ科一種を認める見解を発表している。コウヤマキの特殊な構造を理解し、研究を深めるまでにとても長い時間を要している。(大場秀章著「ナチュラリスト シーボルト」2016ウッズプレス)

奈良県天然記念物に指定されている、コウヤマキ群落

生きている化石、遺存種。

日本の固有種であるコウヤマキ。(※写真は奈良県の天然記念物に指定されているコウヤマキ群落。)

化石の発見から、コウヤマキは恐竜が出現したぐらいの 中生代の三畳紀(約2億5217万年前から約6600万年前)には現在の中国~ヨーロッパ北部に渡り広く分布していたことがわかっています。

ユーラシア大陸からは氷期に消滅してしまったが、日本列島は氷河期でも暖かだったため、生き残ることが出来、コウヤマキ科のコウヤマキ属の種は日本列島にいるコウヤマキ一種だけが存在しています。こうしたほぼ絶滅しているが稀に残っている状態を生きている化石「遺存種」と呼ぶそうです。

「生きた化石」としてメタセコイヤやウォレミマツが有名ですが、コウヤマキはそれよりも古い年代でみつかっており、大変貴重な一種と言えるでしょう。

神話とコウヤマキ

日本の一番古い書物『日本書紀』(720年)には五十三種もの樹木が登場するのですが、神代の巻の、須佐乃袁尊(スサノオノミコト)の説話の中で、「日本は島国だから、舟がなくては困るだろう。そこでスギとヒノキとマキとクスノキを生んで、ヒノキは宮殿に、スギとクスは舟に、マキは棺に使え」というようなことが書かれています。

実際に近畿地方の前方後円墳から出土する木棺は、ほとんど例外なくコウヤマキで作られていることが、林学博士・尾中文彦によって明らかになっています(尾中文彦「木材保存」1939年)

また木簡(文字を書くための板 )もコウヤマキが多く発見されているそうです。千年を超えてまだ文字が鮮明に残っているのだからすごいですね。※写真は 奈良文化財研究所 飛鳥資料館 の平城宮跡にみつかった木簡が2017年に国宝となった際の木簡柄のてぬぐい記念品。

水に強く有用な材として

コウヤマキの木材は非常に水に対して強い特質を持っており、腐りにくくて、朽ちにくいことから、寺院の造営には欠かせなく、また良質の漏水・浸水防止剤として、弥生時代以来は木造船や桶の水漏れを防ぐための槙皮として樹皮が使われてきたそうです。

また、東京隅田川の「千住大橋」は、徳川家康が江戸に入府して間もない1594年(文禄3)に完成した橋で、当時の交通の要衝でもありました。その橋杭は、東北の武将・伊達政宗が献上したコウヤマキの材木を使用したとされ、腐敗に強く、約300年余りの使用に耐えたと言われています。あまり長持ちするので、木ではなく化石であろうといわれたり、当時の川柳にも「伽羅よりもまさる、千住の槇の杭」と詠まれたそうです。※画は『名所江戸百景 千住の大はし』歌川広重 1856年刊)

江戸時代の百科事典『和漢三才図会』にもコウヤマキが水湿に強いことは書いてあったらしいですが、太古の時代の人たちがそれをすでに知っていたというのですから、興味深いですね。

しかし人にとって有用なコウヤマキの成長はとても遅く、発芽してから出荷できるまでは6~7年かかり、樹高約160cmの若木になるのには16年以上かかる樹木です。 日本全国に存在していたコウヤマキですが、建材として利用するために伐採が増えたことで絶えたしまった地域が多いということです。

高野山に多く自生

そんなコウヤマキ、なぜ高野山に多く残っているのでしょうか?

2004年には世界文化遺産登録となった高野山。和歌山県北部、標高約900mの山中に位置する真言密教の聖地。今から約1200年前、817年に弘法大師・空海が修行道場として開山し、日本を代表する修行場となっています。

高野山は何度も大火に見舞われ、寺院の復旧や再建のための材として周囲の森林が著しく伐採され荒廃した為、高野山の復興事業の一環として、ヒノキ・コウヤマキ・スギ・マツ・モミ・ツガなどの苗木を植栽して更新を図りました。それがのちに「高野六木」と設定されています。

森の尊厳を維持するための厳格な規則があり、人々の為になるような果樹、花樹、竹、漆などを勝手に植えることを禁止されています。こうして森林によって信仰環境を護り続け、高野山の幽玄な雰囲気を創出しています。

明治時代のはじめに高野山周辺の山林の大部分が国有化されてから多くの天然林が伐採されたといわれていますが、戦後本山に返還されてから、再び金剛峯寺山林部による森林の育成と管理のお陰で現在の高野山があり、800年前とかわらない高野六木が今でもあるようです。

精油への利用

仏に供えるものは香りがよいものがよいとされ、コウヤマキは香りがよいことから、高野山では仏に供える花の代用として用いられており、修行場でも古くから重用されています。

仏花を製造する過程で発生する切れ端など、不要部分を回収し得たものを水蒸気蒸留して精油となっています。

種の保存の意味でも貴重な香りとして楽しみたいものですね。

秋篠宮悠仁親王の「お印」は高野槇

「お印」とは皇族の方々が皇室内で身の回りの品々を区別するためにつけるもちいるシンボルマーク(印章)のこと。

ご両親である秋篠宮さまと紀子さまが「大きく、まっすぐに育ってほしい」と願いを込めて選ばれたそうです。


アロマブティック オドラータス 精油取り扱いブランド

香りの官能評価・お勧めのブレンド など

使用精油: ODORATASのコウヤマキ

 初めてコウヤマキの精油を嗅いだ時は松系の森の香りを予想していたので、とても意外性のある香りで、森の香りというより、私はお野菜のフキのような香りに感じます。その独特さが少し強く鼻に残る香りでもあり、記憶に残りやすい印象深い香りです。 香りからも、コウヤマキ科のコウヤマキ属の種は他とは別でなければならない独自性を感じることができます。

ブレンドに使うならほんの少量使うことで香りに広がりを持たせることがが出来るでしょう。

ちえむら (アロマブティックオドラータス店主/嗅覚反応分析士トレーナー)

使用精油:ODORATASのコウヤマキ

香りのイメージ: 明け方の湿り気を含んだ清澄な森の空気。

透明感のあるクールでさわやかでやや薬っぽい、ややシャープに広がるハーバルウッディ系の香り。浄化や神聖さ、感覚が研ぎ澄まされ集中できるような気持ちを抱きました。

伊藤賢人 (調香師/化学リテラシーを高める会講師)

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